苔のテラリウムを作る -1ボトルの中で完結する
小さな緑の世界
密閉されたボトルの中で、一年中生き生きとした緑が楽しめる『苔のテラリウム』。
現在ではガラスの器でグリーンを育てることを広くテラリウムと呼ぶようになったけれど、もともとは19世紀に誕生した蓋をしたガラス容器の中で植物を育てる技術。大英帝国の船が植民地を巡り、長い時間水をやらずに異国の植物をこの方法で運んだ。
今回ご紹介する苔のテラリウムは、19世紀当時の方法に近い。水分は蒸発した分だけ足せばいいので、水やりは数週間に1度霧吹きで水を吹きかけるだけ。
苔は日陰に強い植物なので、暗い部屋で育てることができる。本棚や玄関など、一般的な観葉植物を育てる場所としては適さない薄暗い場所でも緑を楽しめる。そして成長のスピードがゆっくりなので頻繁にメンテナンスをする必要がなく、手間がかからないのもうれしい。
そんな苔のテラリウムの作り方を『Feel The Garden』の川本毅さんに教えていただいた。
苔のテラリウムの基本の作り方を学ぶ
まずは『苔のテラリウム』の基礎となる、ヒノキゴケを植える方法をマスターしたい。
「テラリウム作りの前提として、腐りやすい有機物はなるべく入れないようにします。ほとんどの苔に抗菌性がありますが、多湿な上に空気が滞留するボトルの中は腐敗が進みやすいからです」と川本さん。
ヒノキゴケは観賞用として栽培されたものをネット通販などで入手する。
道路脇に生えてる苔を剥がして育ててみたいという気持ちはわかるが、「テラリウムに向いている苔の種類が限られている上に、観賞用として育てられた苔のほうが雑菌も少なく抵抗力も強いので成功しやすいです」とのこと。
いよいよ苔の準備にとりかかる。
容器の中に有機物をなるべく入れたくないので、丁寧に枯葉や古い根を取り除く。
植えたい本数のヒノキゴケの下準備をしたら、まっすぐに伸びているものと、曲がっているものに分ける。曲がっているものは曲がったまま成長するので、まっすぐなものを中心に曲がったものを束ねていき、ブーケのような束を作る。
ボトルの中で苔を土に植える
柔らかな苔は、ピンセットで優しく挟んで土に植えていく。
まず植えたい場所にピンセットでグルグルと穴を開ける。苔をピンセットで上からそっと挟んで、その穴に植える。ピンセットを引き抜く時に一緒に苔も抜けてしまわないように、スプーンなどで押さえながら引き抜くとよい。
ボトルの口が狭いほど作業がし辛い。ボトルシップを作っているような感覚になる。
苔のテラリウムに直射日光はNG
「テラリウムの苔を生き生きと保つためには、容器をどこに置くかがポイントになります。直射日光が当たる場所は避けてください。葉が焼け、ボトルの中の水分がお湯になってしまうのですぐに苔が枯れてしまいます」
苔は森の中の暗い場所でも育つので、部屋の中の薄暗い場所でも問題ない。
「リビングの奥のほうが理想的な場所です。暗い玄関でも、小窓があれば耐えられます」
今回は、苔のテラリウムの基本編。次回は、ミニチュア人形を使った、より物語性の高いテラリウムの作り方を教えていただく。