ビカクシダを壁に飾る存在感のあるビカクシダを
板付きにする方法を学ぶ
胞子葉と貯水葉、2種類の葉を持つ
ビカクシダは樹木や岩などに付着して成長する着生シダ。原産地は東南アジアやオーストラリア、マダガスカルなど。原種は18種類あると言われている。さらに生産者や育種家により、交配種や寒さや乾燥に強い園芸種も生まれている。
ビカクシダは、前方向に伸びる胞子葉と、株元に巻くようにできる貯水葉の2つの葉を持つ。
胞子葉は寿命が来ると葉元から抜けるようにして落葉するが、貯水葉は最初は緑で、寿命が来ると茶色に変わり、脱落せずに株元に積み重なりスポンジのような役割をしながら水を貯える。
園芸店では、鉢植えや、ハンギングができる板付け、苔玉など、様々スタイルに仕立てられたものを販売している。
今回は、オリジナルのビカクシダ着生用プレートを制作、販売している『Flying』の宮原隆作さんに、ビカクシダの板付けの方法を教えていただいた。
「成長点はリゾームと呼ばれる株に1つだけある大切な場所です。植物は枝分かれするものが多いですが、成長点がひとつというのがビカクシダのユニークな特徴ですね。植え替えの際は、ここを傷つけないように注意してください」
用意するものは、6つ
ビカクシダとは、大鹿の角のシダという意味。『Flying』のプレートは、ビカクシダを付けると、まるで鹿の剥製を飾っているように見えるのがおもしろい。
そして【(2)ビカクシダ】。今回はヒリーという種類のビカクシダを使った。
ビカクシダに土は使わない。着生植物なので、自然の状態では土に生えていないからだ。【(3)水苔】と、【(4)ベラボン】というヤシの実の繊維を使う。
ビカクシダは多湿の場所に自生しているイメージがあるが、根腐れには弱い。保水力がありながら、乾けば通気性が良いベラボンと水苔を使うことで、自然に近い状態を再現する。
さらに、板にビカクシダを固定するための【(5)テグス】。
「テグスではなく、麻ひもを使いたいと思う方もいらっしゃると思いますが、麻ひもは想像以上に早く腐って切れてしまい、株が落下してしまう恐れがあります。もしテグスでなければ、ミシン糸を使ってもよいでしょう」
テグスを切る【(6)カッター】も準備する。
株の上下を間違えないようにセットする
ただし、ビカクシダを板付けする際、注意したいことが2点ある。
ひとつは株の上下を間違えないこと。ビカクシダは、葉を伸ばしていく方向が決まっている。上下を間違えてハンギングすると、成長が著しく遅くなる。
そして成長点を傷つけないこと。枝分かれしながら成長する他の植物と違って、ビカクシダは成長点からしか葉を伸ばさない。
「ビカクシダは、春から夏にかけて成長します。半年後の株の大きさをイメージして、ベラボンの量を決めるとよいでしょう。
植え替えは春がオススメです。ビカクシダは寒さに弱く休眠してしまう種類もあるので、冬の植え替えは避けたほうがよいです」
常にジメジメした状態はNG
『Flying』のプレートは、そんなビカクシダの性質を考慮し、大きな穴から根本にしっかりと水をやりながら、小さな穴で通気をよくできるよう設計されている。
『Flying』には、プレートの他に、立体的な台がある。ここでリドレイという種類の貯水葉が美しく大きく成長するビカクシダを育てると、その美しさが一層引き出される。
リドレイは東南アジア系のビカクシダなので、寒さや蒸れに弱い傾向がある。上級者向けの種類だ。
リドレイが上級者向けだとしたら、ネザーランドという園芸種は初心者にもってこいの種類だ。暑さ寒さ、蒸れにも乾燥にも強く、育てやすい。
「種類によって姿形が変わるビカクシダは、ひとつ育てると違うものを育ててみたくなる魅力を持っています。たとえば、オーストラリア系のビカクシダは、胞子葉がまっすぐ上に伸びます。
存在感のあるビカクシダで、インテリアに映えるグリーンライフを楽しんでください」