料理家夫妻と3兄弟の住まい食とアート、家族の時間を慈しむ
外国人仕様のヴィンテージマンション
世田谷区の落ち着いた住宅街に建つ築30年ほどの低層マンション。当初は外国人向けにつくられたというこのマンションは、ワンフロア1世帯という贅沢なつくり。30畳のリビングや2つのバスルームを備え、ゆとりある間取りが特徴的だ。
この物件に昨年末に引っ越してきたのは、島田哲也さん・まきさんご夫妻と、高校生・中学生・小学生の3人の息子さんたち。以前住んでいたマンションが手狭になり、家族5人がゆったりと暮らせる物件を探していたという。「天井が高くてドアが大きいところ、廊下が広いところ、そして窓が多くて開放感たっぷりのリビングが気に入りました」(まきさん)。
まきさんは料理家で、以前の住まいの時から自宅で料理教室「makicooking studio」を主宰している。ご主人の哲也さんも料理家で、人形町のフレンチビストロ「イレール人形町」のオーナーシェフを務め、帰宅は深夜となる多忙な日々だ。そして3兄弟はそれぞれスポーツや趣味に打ち込み、友だちを家に連れて来ることも多い。「それぞれ忙しくしている家族がゆったりとくつろげ、ゲストにも居心地の良い住まいを求めていたのですが、ここは理想通りだったんです」。
食の楽しみを分かち合う
まきさんが料理を始めたのはなんと保育園のころ。台所が一番の遊び場で、大人にくっついて料理をしていたという。小学校の入学祝いに電気オーブンと分厚い料理本をもらってからは、料理熱がさらに加速。休みの日は1日中料理をつくり、ご家族や近所の方に振舞っていたそうだ。「食べた人が笑顔で喜んでくれるのがとにかくうれしかった。その気持ちが料理家人生の原点です」。
自宅料理教室「makicooking studio」では、「フレンチ家庭料理」、「日本の家庭料理」、「大人の女性の為の薬膳」を教えているが、その全てに共通するのは身体に優しい料理であることだ。「うちの母は薬剤師で漢方も取り扱っていたので、『医食同源』の考えを大切にしていて、家族の健康を気遣った料理を出してくれました。その精神は私の中にも根付いています」。レッスンは自宅料理教室ならではのアットホームな雰囲気で、長年通うファンも多い。
一方夫の哲也さんは、20代で渡仏し、パリの三つ星レストラン「アルページュ」で日本人初の魚担当シェフに抜擢された経歴の持ち主。現在は、「肩肘張らずに美味しいフレンチとワインを楽しんで欲しい」と、人形町のビストロ「イレール人形町」で腕をふるう。
そろって料理家の島田さんご夫妻。互いに忙しい日々だからこそ、休みの日は家族の時間をゆったり過ごすようにしている。「大人は夕方からワインを開けて、美味しい料理をつくって、家族みんなでわいわいと食べる。それが何よりも贅沢な時間です」とまきさんは笑顔で話す。
ちなみに3人の息子さんの大好物は「煮豆」。「いつも取り合いが起こる」というエピソードも微笑ましい。
絵画を暮らしのスパイスに
この住まいで家族やゲストの目を楽しませているのは、玄関から廊下、リビングといたるところに飾られた絵画たち。ご夫妻そろってアートが好きで、季節や気分によって掛け替えて楽しんでいるそうだ。
「夫婦そろって好きなのはマティス。生き生きとした色づかいや筆づかいに惹かれます。買ったものもありますが、古い画集から好きな絵を切り取って額装するなど、自分たち流の自由な楽しみ方もしています」。
料理とアート。お皿とキャンバスと舞台は違えど、自分の世界を表現し、人に感銘を与えるという共通項があるのかもしれない。
食の楽しみを発信し続ける島田さんご夫妻。その住まいは、ゲストを心からもてなし、そして家族の時間をていねいに楽しむ温もりにあふれていた。