料理家夫妻と3兄弟の住まい 食とアート、家族の時間を慈しむ  外国人仕様のヴィンテージマンション

料理家夫妻と3兄弟の住まい食とアート、家族の時間を慈しむ

外国人仕様のヴィンテージマンション

世田谷区の落ち着いた住宅街に建つ築30年ほどの低層マンション。当初は外国人向けにつくられたというこのマンションは、ワンフロア1世帯という贅沢なつくり。30畳のリビングや2つのバスルームを備え、ゆとりある間取りが特徴的だ。

この物件に昨年末に引っ越してきたのは、島田哲也さん・まきさんご夫妻と、高校生・中学生・小学生の3人の息子さんたち。以前住んでいたマンションが手狭になり、家族5人がゆったりと暮らせる物件を探していたという。「天井が高くてドアが大きいところ、廊下が広いところ、そして窓が多くて開放感たっぷりのリビングが気に入りました」(まきさん)。

まきさんは料理家で、以前の住まいの時から自宅で料理教室「makicooking studio」を主宰している。ご主人の哲也さんも料理家で、人形町のフレンチビストロ「イレール人形町」のオーナーシェフを務め、帰宅は深夜となる多忙な日々だ。そして3兄弟はそれぞれスポーツや趣味に打ち込み、友だちを家に連れて来ることも多い。「それぞれ忙しくしている家族がゆったりとくつろげ、ゲストにも居心地の良い住まいを求めていたのですが、ここは理想通りだったんです」。

30畳のリビング・ダイニングにはL字に窓がついていて、光がふんだんに入る。右のマティスの絵画は、ご夫妻が新婚時代にフランスに旅行して購入したもの。

30畳のリビング・ダイニングにはL字に窓がついていて、光がふんだんに入る。右のマティスの絵画は、ご夫妻が新婚時代にフランスに旅行して購入したもの。

結婚する時に購入したダイニングテーブルは、イタリアのメーカー「ポルトローナ・フラウ」のもの。革張りにガラスというユニークな意匠が面白い。

結婚する時に購入したダイニングテーブルは、イタリアのメーカー「ポルトローナ・フラウ」のもの。革張りにガラスというユニークな意匠が面白い。

20年ほど使っている「ル・コルビジェ」のソファ。「元は黒だったのですが、愛用しすぎて汚れが目立ってきたので、途中で茶色に張り替えました」。

20年ほど使っている「ル・コルビジェ」のソファ。「元は黒だったのですが、愛用しすぎて汚れが目立ってきたので、途中で茶色に張り替えました」。

「ル・コルビジェ」のスリングチェア。後ろの棚には、料理や美術の本、ご家族の写真が並ぶ。

「ル・コルビジェ」のスリングチェア。後ろの棚には、料理や美術の本、ご家族の写真が並ぶ。

廊下は大人が悠々とすれ違えるくらいのゆったり幅。

廊下は大人が悠々とすれ違えるくらいのゆったり幅。

哲也さんはベーシストとしてバンド活動も行っている。ワインセラーには、ご夫妻が厳選したワインがずらり。

哲也さんはベーシストとしてバンド活動も行っている。ワインセラーには、ご夫妻が厳選したワインがずらり。

食の楽しみを分かち合う

まきさんが料理を始めたのはなんと保育園のころ。台所が一番の遊び場で、大人にくっついて料理をしていたという。小学校の入学祝いに電気オーブンと分厚い料理本をもらってからは、料理熱がさらに加速。休みの日は1日中料理をつくり、ご家族や近所の方に振舞っていたそうだ。「食べた人が笑顔で喜んでくれるのがとにかくうれしかった。その気持ちが料理家人生の原点です」。

自宅料理教室「makicooking studio」では、「フレンチ家庭料理」、「日本の家庭料理」、「大人の女性の為の薬膳」を教えているが、その全てに共通するのは身体に優しい料理であることだ。「うちの母は薬剤師で漢方も取り扱っていたので、『医食同源』の考えを大切にしていて、家族の健康を気遣った料理を出してくれました。その精神は私の中にも根付いています」。レッスンは自宅料理教室ならではのアットホームな雰囲気で、長年通うファンも多い。

一方夫の哲也さんは、20代で渡仏し、パリの三つ星レストラン「アルページュ」で日本人初の魚担当シェフに抜擢された経歴の持ち主。現在は、「肩肘張らずに美味しいフレンチとワインを楽しんで欲しい」と、人形町のビストロ「イレール人形町」で腕をふるう。

そろって料理家の島田さんご夫妻。互いに忙しい日々だからこそ、休みの日は家族の時間をゆったり過ごすようにしている。「大人は夕方からワインを開けて、美味しい料理をつくって、家族みんなでわいわいと食べる。それが何よりも贅沢な時間です」とまきさんは笑顔で話す。

ちなみに3人の息子さんの大好物は「煮豆」。「いつも取り合いが起こる」というエピソードも微笑ましい。

キッチンは独立していて5畳ほどある。「大きな作業台、オーブンや食洗機も元からついていて、とても使いやすい。私だけの書斎みたいな感覚です」とまきさん。

キッチンは独立していて5畳ほどある。「大きな作業台、オーブンや食洗機も元からついていて、とても使いやすい。私だけの書斎みたいな感覚です」とまきさん。

器は「一目惚れ」で選ぶことが多い。フランスの陶磁器「Jarz」は、和洋中問わずに料理を引き立ててくれるという。

器は「一目惚れ」で選ぶことが多い。フランスの陶磁器「Jarz」は、和洋中問わずに料理を引き立ててくれるという。

右のミルクピッチャーは、タスマニアのマーケットで購入。左はスパイスの空き瓶で、テーブルに置く花瓶として愛用。

右のミルクピッチャーは、タスマニアのマーケットで購入。左はスパイスの空き瓶で、テーブルに置く花瓶として愛用。

鎌倉で買ったアンティークの蓋付椀。「蓋だけで使っても面白いんですよ」とまきさん。

鎌倉で買ったアンティークの蓋付椀。「蓋だけで使っても面白いんですよ」とまきさん。

出汁を取るときはなるべく鰹節を削る。「パックとは別物の風味。味噌汁が格段に美味しくなります」。

出汁を取るときはなるべく鰹節を削る。「パックとは別物の風味。味噌汁が格段に美味しくなります」。

調味料は無添加で原料や製法にこだわったものを厳選。左から「BALSAMO DOVINO」のバルサミコ酢・ホワイトバルサミコ酢、「FRESCOBALDI LAUDEMIO」のオリーブオイル、ニュージーランド産のマヌカハニー。

調味料は無添加で原料や製法にこだわったものを厳選。左から「BALSAMO DOVINO」のバルサミコ酢・ホワイトバルサミコ酢、「FRESCOBALDI LAUDEMIO」のオリーブオイル、ニュージーランド産のマヌカハニー。

人参のパウンドケーキとフランボワーズティー。ケーキにはたっぷりの人参の他、ナッツ、レーズン、生姜など体に良い素材がたっぷり入っていて、食べると元気になる。

人参のパウンドケーキとフランボワーズティー。ケーキにはたっぷりの人参の他、ナッツ、レーズン、生姜など体に良い素材がたっぷり入っていて、食べると元気になる。

絵画を暮らしのスパイスに

この住まいで家族やゲストの目を楽しませているのは、玄関から廊下、リビングといたるところに飾られた絵画たち。ご夫妻そろってアートが好きで、季節や気分によって掛け替えて楽しんでいるそうだ。

「夫婦そろって好きなのはマティス。生き生きとした色づかいや筆づかいに惹かれます。買ったものもありますが、古い画集から好きな絵を切り取って額装するなど、自分たち流の自由な楽しみ方もしています」。
料理とアート。お皿とキャンバスと舞台は違えど、自分の世界を表現し、人に感銘を与えるという共通項があるのかもしれない。

食の楽しみを発信し続ける島田さんご夫妻。その住まいは、ゲストを心からもてなし、そして家族の時間をていねいに楽しむ温もりにあふれていた。

玄関には、観る人を元気にしてくれそうな赤が効いたマティスの絵画。

玄関には、観る人を元気にしてくれそうな赤が効いたマティスの絵画。

シンプルながら生命力を感じさせるマティスのデッサン。

シンプルながら生命力を感じさせるマティスのデッサン。

画集から切り抜いて額装したポップな色づかいのマティスの絵画。「古い紙についたシミも味かな」とまきさん。

画集から切り抜いて額装したポップな色づかいのマティスの絵画。「古い紙についたシミも味かな」とまきさん。

フランスの画家・サヴィニャックのポスター。「にわとりが、家族を守る夫にどことなく似ていて、とても気に入っています」(まきさん)。

フランスの画家・サヴィニャックのポスター。「にわとりが、家族を守る夫にどことなく似ていて、とても気に入っています」(まきさん)。

イランの遊牧民族・ガシュガイ族が織った「ギャッペ」。シンプルなインテリアに温かみのある小物をプラスするのがまきさん流。

イランの遊牧民族・ガシュガイ族が織った「ギャッペ」。シンプルなインテリアに温かみのある小物をプラスするのがまきさん流。

料理家の島田まきさん。テレビ出演や雑誌掲載、企業商品開発なども手がける。奥に並ぶのは、料理教室でも「イレール人形町」でも愛用する「Disanti」のオリーブオイル。

料理家の島田まきさん。テレビ出演や雑誌掲載、企業商品開発なども手がける。奥に並ぶのは、料理教室でも「イレール人形町」でも愛用する「Disanti」のオリーブオイル。

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