ボーホーシックに彩る感性が引き寄せる
ものとの出会いを愉しむ
ボヘミアンの香りを漂わせて
H.P.FRANCE、H.P.DECO勤務を経て、フリーのクリエイティブディレクターとして活動する丹地良子さん。ふたりのお子さんと暮らす12年前に購入したマンションの一室は、アーティスティックな香りに満ちている。
「クラシカルなヨーロッパではなくて、ボーホーシックが好きなんです。ヨーロッパの人たちが、道端で拾ってきた石を飾ってデコレーションしたりするような…」。
ボヘミアンとNYのソーホーのミックススタイルを意味するボーホーシック。味のあるインテリアや雑貨、グリーンに彩られた空間は、海外のインテリア雑誌の1ページのよう。
「フランスの雑誌”MilK DECORATION”の世界が大好きなんです。20年くらい前のマリ・クレールなどもボロボロになるまで読んでいます(笑)」。
その審美眼で選ばれたものたちは、ひとつひとつ物語を語るかように空間を彩っている。
呼吸する家であってほしいんです
「アンティークは意外と少ないですね。古いものというよりは、有名無名を問わず作家性のあるものに惹かれます。あとは誰がつくったかわからないフランスの蚤の市で買ったものなど、ひと目見てビビッときたものを置いています。それを創った人たちの感性をすごくリスペクトしているんです」。
好きなものを集める中でも、大事にしているのは抜け感。
「ワイヤーのオブジェやガラス製のデスク、シャンデリアも抜けのあるものを選んでいます。そしてよく考えると曲線のものが多いんです。ダイニングの椅子も、包み込まれるような曲線を描いていますし。自然界には直線のものってほぼないんですよね。本能的に曲線に惹かれているのかもしれません」。
マテリアルならばリネンや鉄といった自然素材。ダストボックスも無意識に紙製を選んでいる。
「有機的じゃないものが好きではないのでしょうね。自然界にあるものに囲まれて家が呼吸していてほしい、と思います」。
家はいちばん大事な癒しの場
ひとつの世界観を創りあげるようにデコレーションされたLDK。その一角は、微妙なニュアンスの赤い壁が、経年の味わいのインテリアに調和している。
「DIYというほどではありませんが、ホームセンターで買ってきた塗料を自分で混ぜて調色して塗りました。ヨーロッパの人たちのように、家をいちばん大事な場所として捉えて手をかける。その悦びを知ってもらいたい、というのが私の仕事の目的のひとつでもありますね」。
丹地さんは空間づくりの講話を不定期で開催。テクニックとともに、そこで過ごすシーンをイメージすることの大切さも伝えている。
「家にいるのが大好きなんです。好きなものに囲まれて家で過ごす時間が私の癒し。出歩くとしたら海外など、人の温もりや思いのこもったものに出会える場所に行き、商業的でないデザインに触れたいと思っています」。
お子さんの手も離れていくこれからの人生、丹地さんの興味はますます広がっている。
「目的を持たず、偶然の出会いを求めて海外を歩きたいですね。そこでまた何かのインスピレーションを得るかもしれません」。