防災から考える整理収納Part2 災害時にも役立つモノを 効率的に使って暮らす

防災から考える整理収納Part2 非常時を考えて備える
防災に役立つLDK

危険度の高いキッチンの工夫

整理収納アドバイザーにして、防災備蓄収納マスタープランナー、防災士の熊田明美さん。Part1では用意しておきたい備蓄用品と、その収納の仕方について伺った。Part2の今回は、防災を意識しながら日々快適に使いこなす、キッチンとリビングの収納について伺う。
「1日の中で長い時間を過ごすキッチンは、大きな地震が起こったとき危険地帯になります。背の高い食器棚や冷蔵庫の転倒防止、電子レンジなどの落下防止は基本です」。
熊田さんのお宅は、天井との間に隙間のないぴったりサイズの食器棚を置き、冷蔵庫には転倒防止器具を取り付けて防止。包丁や食器類も出しっ放しにしないことを守っている。
「使用頻度の高い食器は、割れない素材を選び目線の高さに収納。引き出し内にもソフト系のケースなど、衝撃を吸収する素材のボックスを使ってアイテム分けをしています」。
引き出しに収めているコップには、シリコン製のコースターを1枚かませて、ぶつかっても割れないように。吊戸棚と引き出しには、各段に落下防止と安定のための滑り止めマットを敷いている。
「毎日長時間使うヨーグルトメーカーは、キッチン台に出しているのですが、浴室用のマグネット棚を取り付け収納スペースにしました。キッチン台から浮き上がっているのでお掃除も楽で、地震の際には落下抑制にもなります」。
上段には割れない食器を。棚板と棚板の間にコの字ラックを活用して収納力をアップ。

上段には割れない食器を。棚板と棚板の間にコの字ラックを活用して収納力をアップ。

陶器の食器も収めている引き出し内。やわらかいボックスを使いつつ、コップとコップの間にシリコンコースターをかませている。

陶器の食器も収めている引き出し内。やわらかいボックスを使いつつ、コップとコップの間にシリコンコースターをかませている。

毎日長時間使う使用頻度の高いヨーグルトメーカーを壁に固定。浮かせることで拭き掃除が楽に。落下抑制効果もある。

毎日長時間使う使用頻度の高いヨーグルトメーカーを壁に固定。浮かせることで拭き掃除が楽に。落下抑制効果もある。

耐震ラッチのついていない観音扉には開き戸ロックを。シンク下ではファイルボックスを活用し、取り出しやすくしている。

耐震ラッチのついていない観音扉には開き戸ロックを。シンク下ではファイルボックスを活用し、取り出しやすくしている。

コンロで使う調理器具は数を絞っている。重ねず収納することで取り出しやすく。自動調理鍋を購入してから炊飯器は引き出しに収納。巾木収納には、深型フライパンとセラミック鍋など大きめの鍋を収納している。

コンロで使う調理器具は数を絞っている。重ねず収納することで取り出しやすく。自動調理鍋を購入してから炊飯器は引き出しに収納。巾木収納には、深型フライパンとセラミック鍋など大きめの鍋を収納している。

ローリングストックを継続する

「災害が起きた後にもなるべく普段と同じような生活ができるようにしたいんです」。
という熊田さん。食糧備蓄は家族3人、1週間は問題なく暮らせるように準備。「災害時の1週間献立表」を作成し、吊り戸棚の扉の裏側にフックを付けて掛けている。
「賞味期限の古い食材から消費します。何を持っているか把握し、期限切れを防ぐために、ラベル貼りと透明・半透明の収納グッズ、中身が分かる収納グッズを使うのがおすすめです」。
缶詰などは最低在庫数を決めて、半透明のボックスに保管。冷蔵庫横のストック棚には、消費用コーナーを設け、家族にもそこから使ってもらうようにしているそう。
「カセットコンロとポリ袋で調理するパッククッキングセットも用意しています。長男が好きなホットケーキ粉は、普段から消費。災害時には蒸しパンも作れます。日頃から美味しいと思える味や食べ慣れた味の食品をストックしておけば、災害時も食欲がでます」。
吊り戸棚の上段は、アイテム別に分けた食材を持ち手付きのボックスに入れて取り出しやすく。調理器具は片手でも取り出しやすいように収納。左の扉裏に「災害時の1週間献立表」を掛けている。

吊り戸棚の上段は、アイテム別に分けた食材を持ち手付きのボックスに入れて取り出しやすく。調理器具は片手でも取り出しやすいように収納。左の扉裏に「災害時の1週間献立表」を掛けている。

半透明のボックスに調味料など食材を収納。キッチン台では、電気ケトルのコードをフックにかけ落下を抑制。掃除も楽に。ケトルに水を計って入れるなど使用頻度の高い計量カップもフックにかけてアクション数を減らしている。

半透明のボックスに調味料など食材を収納。キッチン台では、電気ケトルのコードをフックにかけ落下を抑制。掃除も楽に。ケトルに水を計って入れるなど使用頻度の高い計量カップもフックにかけてアクション数を減らしている。

初期消火に役立つ、オレンジ色のファイヤーブランケットは、火元になりやすいコンロから2mくらい離して、シンク側に設置。食洗機に入れない洗いもの用に使っている水切りマットは、ソフトなシリコン製を選択。

初期消火に役立つ、オレンジ色のファイヤーブランケットは、火元になりやすいコンロから2mくらい離して、シンク側に設置。食洗機に入れない洗いもの用に使っている水切りマットは、ソフトなシリコン製を選択。

パッククッキングセットをボックスに。普段から定期的にポリ袋調理をして、災害時にもすぐできることが大事。

パッククッキングセットをボックスに。普段から定期的にポリ袋調理をして、災害時にもすぐできることが大事。

災害時はゴミ収集がいつ再開するか分からないため、ゴミ袋は日頃から多めに用意。牛乳パックを使って1枚ずつ取り出せるように収納している。

災害時はゴミ収集がいつ再開するか分からないため、ゴミ袋は日頃から多めに用意。牛乳パックを使って1枚ずつ取り出せるように収納している。

冷蔵庫横の隙間を活用して、ラベリングに必要なものを。マスキングテープは賞味期限を記入するのに便利。

冷蔵庫横の隙間を活用して、ラベリングに必要なものを。マスキングテープは賞味期限を記入するのに便利。

非常食にもなる缶詰をローリングストック。下2段を消費コーナーとし、缶詰と調味料はここにあるものから消費。

非常食にもなる缶詰をローリングストック。下2段を消費コーナーとし、缶詰と調味料はここにあるものから消費。

安全第一のリビング収納

すっきりと片付けられたリビングにも、見えないところに防災の工夫が。
「照明は落下しない割れない素材のシーリングライトを選び、ソファーにはクッションを置きいざという時サッと頭を守るようにしています。インテリアも、破損の危険がない素材を選びつつ楽しんでいます」。
容量の多い壁面いっぱいのTVボードは、隙間がなく天井まであることで転倒を防止。
「ここには日常使いするマスクや薬、文房具や書類などを収めています。扉のないスペースでは、飛んできても割れない小物をディスプレイするようにしています」。
グラフィックアートのような飾りは、実は防災トイレ。非常用トイレとしてだけでなく、食べ物や飲み物の残りを処理する際にも役立つことから、キッチンに近い位置に置いている。
「リビングにもローリングストックとして、普段から楽しめるおやつや飲料を置いています。特に野菜ジュースは、災害時の栄養素としても備えておきたいですね」。
いざというときも慌てず、日常に近い生活ができるように、ポータブル蓄電池も普段から使用しているそう。
「日頃から災害時を想定して暮らしておくことが大事です。本当に必要なもの、いざという時にも役立つものをすっきり収め、快適で安心できる暮らしをしたいと思います」。
リビングのTVボード。天井まであるため転倒の心配がない。

リビングのTVボード。天井まであるため転倒の心配がない。

扉の中はボックスを活用し、マスクや薬などを収納。余裕があるので取り出しやすい。

扉の中はボックスを活用し、マスクや薬などを収納。余裕があるので取り出しやすい。

文房具類はアイテム毎にまとめておけば、使いたいときすぐ手にできる。

文房具類はアイテム毎にまとめておけば、使いたいときすぐ手にできる。

書類はジャンルに分けてラベリング。ファイルボックスの高さに棚板を調整し収納。

書類はジャンルに分けてラベリング。ファイルボックスの高さに棚板を調整し収納。

上段奥が防災用の飾るトイレの「アートトワレ」。フレームも紙製で、中には凝固剤、ポリ袋などがセットになっている。

上段奥が防災用の飾るトイレの「アートトワレ」。フレームも紙製で、中には凝固剤、ポリ袋などがセットになっている。

リビングダイニングにあるおやつ、水、ジュースの備蓄。普段から消費し、最低在庫を意識して回している。

リビングダイニングにあるおやつ、水、ジュースの備蓄。普段から消費し、最低在庫を意識して回している。

ポリカーボネイトの割れない花瓶の向こうは、Jackery ポータブル電源 ソーラーパネルセット。晴れた日はソーラーパネルでフル充電し、スマホやライトの充電に使用している。

ポリカーボネイトの割れない花瓶の向こうは、Jackery ポータブル電源 ソーラーパネルセット。晴れた日はソーラーパネルでフル充電し、スマホやライトの充電に使用している。

来客時にはベッドにもできるベンチ。下の空きスペースを活用して、キャスター付き収納ケースに水を保管。

来客時にはベッドにもできるベンチ。下の空きスペースを活用して、キャスター付き収納ケースに水を保管。

防災備蓄収納マスタープランナー、整理収納アドバイザー、防災士の「Nice Life」代表・熊田明美さん。快適で安心な生活づくりを提案している。

防災備蓄収納マスタープランナー、整理収納アドバイザー、防災士の「Nice Life」代表・熊田明美さん。快適で安心な生活づくりを提案している。

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