ミニマリストの暮らし方Part1  心地よく過ごすための リノベーションと収納の工夫

ミニマリストの暮らし方 Part1心地よく過ごすための
リノベーションと収納の工夫

不要なものの処分から始めてみる

3人の男の子のお子さんとともに、5人家族で3LDKに暮らす、ミニマリストの尾崎友吏子さん。約3年前に、90㎡あったマンションから今の家に引っ越した。
「三男が生まれて部屋が狭くなったことから、整理収納の勉強を始めたんです。その時知ったのは“整理の基本は不要なものを持たないこと”。思いきって使わないものを手放したら、ひと部屋空きました」。
そこで、以前よりもコンパクトな家に暮らすことに。スペースが縮小されたことで掃除も楽になり、その分自由に使える時間が増えた。
「スペースがあると、ついもので埋めたくなります。家が狭い方が収まるかどうかを考えて買うので、とりあえず買ってしまうということもなくなりますね」。

すっきりとシンプルに暮らすためにリノベーションも実行。家事をこなしながら建設コンサルタントで働く尾崎さんに、快適に暮らすためのリノベーション、整理収納の仕方を伺った。

素足になじむ無垢のヒノキの床は、和室だった隣室にも敷いた。オーストリアの家具メーカーTEAM7でセミオーダーしたダイニングテーブルは、脚にローラーがついていて、掃除のときも楽に動かせる。

素足になじむ無垢のヒノキの床は、和室だった隣室にも敷いた。オーストリアの家具メーカーTEAM7でセミオーダーしたダイニングテーブルは。脚にローラーがついていて、掃除のときも楽に動かせる。

5人家族ものびのび過ごせるLDK

尾崎邸の広々としたLDKは、フローリングと畳を半分ずつ敷いた床が特徴。隣のもと和室だった部屋と引き戸を介して接続しているため、開け放っておけばさらに広々と開放感が感じられる。二級建築士でもある尾崎さんは、現在の使い勝手を考えた上で、自分でリノベーションの案を出した。
「視覚的には床は同一素材のほうが広く感じるものですが、フローリングだと家具を置きたくなってしまいます。でも、ソファーひとつ置けばサイドテーブルも置きたくなるし、そうなると狭くなる上に掃除やメンテナンスもついてきます。その家によって使い勝手は違いますが、我が家は小学生〜高校生の子供がいて友達なども大勢やってくるし、広々とさせておきたいと思いました。家族みんなでいるときは、畳の上で旅館みたいにゴロゴロ過ごしていますね」。
こうしておけばいずれ家族が成長したときには、また変えることもできる。家族形態、暮らし方などによってフレキシブルに対応させたい。

LDKの半分は畳に。冬は家族それぞれがハーフマットを敷いて座ったりゴロゴロしたり。不要な時は片付けておく日本の座布団文化から思いついたそう。

LDKの半分は畳に。冬は家族それぞれがハーフマットを敷いて座ったりゴロゴロしたり。不要な時は片付けておく日本の座布団文化から思いついたそう。

リビングダイニングにはサイズを計って棚を造作。ファイルケースは家族それぞれに用意し、学校のプリントや書類などを収納している。ダイニングテーブルの椅子を反対側に向ければ、造作の棚が作業机にもなる。

リビングダイニングにはサイズを計って棚を造作。ファイルケースは家族それぞれに用意し、学校のプリントや書類などを収納している。ダイニングテーブルの椅子を反対側に向ければ、造作の棚が作業机にもなる。

使い勝手を考えた“見せる”キッチン

フローリングと畳のLDKにしっくりとなじむキッチンは、無垢の天板のキッチン台が印象的。
「我が家のキッチンはオープンですし対面式でもないのでリビングから丸見え。そこで家具っぽいものを探しました。イギリスのキッチンメーカーのものですが、陶器のシンク、無垢の素材感が気に入っています。仕切りなどが細かくついていると後から変えられないので、シンプルなところもいいですね」。
使い込んだステンレスのお鍋は、ホームセンターで板を買い、大工さんに取り付けてもらった可動式の棚に陳列。
「普通、お鍋はしまって、ケトルなどを出しておくと思うのですが私は逆。使う度に洗うお鍋は出しておいても清潔ですが、ケトルは毎回洗うわけではないし、ガスコンロの横に置いておくと、油とほこりにまみれがちです。だから扉の中に収めています」。
可動式の棚は、下の方を空けておくとゴミ箱など背の高いものも置けて便利。お子さんの勉強机の上にも書棚として活用している。

イギリスdeVOL社のシェーカースタイルのキッチン。総無垢材で職人が手作りする、シンプルで温もりのある佇まい。

イギリスdeVOL社のシェーカースタイルのキッチン。総無垢材で職人が手作りする、シンプルで温もりのある佇まい。

可動式の棚に愛用のお鍋を陳列。機能的なだけでなく使い込んだ味わいも。

可動式の棚に愛用のお鍋を陳列。機能的なだけでなく使い込んだ味わいも。

シンクまわりにはよく使うキッチンツールを厳選し、掃除の手間を最小限に。

シンクまわりにはよく使うキッチンツールを厳選し、掃除の手間を最小限に。

20年使っている鉄のフライパンは、使用後に水分を焼き切るので、熱いまま吊るせるよう工夫している。

20年使っている鉄のフライパンは、使用後に水分を焼き切るので、熱いまま吊るせるよう工夫している。

吊り収納の扉の中。円卓のような回転する台に調味料などを載せ、奥の方のものを取り出しやすくしている。

吊り収納の扉の中。円卓のような回転する台に調味料などを載せ、奥の方のものを取り出しやすくしている。

調味料や食材はクリア容器で中身が分かるように保管。引出しにぴったり収まる高さの容器を探した。

調味料や食材はクリア容器で中身が分かるように保管。引出しにぴったり収まる高さの容器を探した。

カトラリーやお箸は人数分、調理器具、布巾などは愛用のものを一番開けやすい引出しに。

カトラリーやお箸は人数分、調理器具、布巾などは愛用のものを一番開けやすい引出しに。

5人分を収納するクローゼット

尾崎邸のクローゼットは3畳。ここに家族5人分の衣類をすべて収納している。
「引っ越す前に全員分の服の枚数を考えて、3畳で足りることがわかったんです」。
服を畳む手間を考えて、尾崎さんは吊るす方式を採用。かけるハンガーの数からバーの長さを考えたら必要なスペースが分かったという。
「クローゼット内は家族それぞれの場所が決まっています。いちばん手前は洗い終わって一時的にかけておくところですが、私がここにかけておくと、それぞれが自分の場所に移動させることになっています」。
衣装ケースには季節外の衣類だけでなく、おもちゃやリサイクルに回すものなども。旅行用キャリーケースには非常用持ち出し袋をそのまま入れてスタンバイ。新品の下着などのストックも入れて、日常的にも使えるようにしている。
「掃除道具は目につきにくい場所を探して、クローゼットのドア裏に吊るしました」。
狭いスペースを有効に活用する知恵が満載されている。

収納だったところを3畳のクローゼットに。服は畳まずハンガーにかけるという選択で家事がぐっと楽に。ミニマリスト尾崎友吏子さん。ブログでミニマルな生活の心地よさを発信。『追われない家事』(KADOKAWA)などの著書も。

収納だったところを3畳のクローゼットに。服は畳まずハンガーにかけるという選択で家事がぐっと楽に。ミニマリスト尾崎友吏子さん。ブログでミニマルな生活の心地よさを発信。『追われない家事』(KADOKAWA)などの著書も。

IKEAや無印良品の布製ホルダーが、小分けに活躍。 避難グッズを収めたキャリーケースを片隅に。

IKEAや無印良品の布製ホルダーが、小分けに活躍。
避難グッズを収めたキャリーケースを片隅に。

掃除道具はクローゼットのドア裏に。取り出しやすく、目につきにくい場所なのがよいのだそう。

掃除道具はクローゼットのドア裏に。取り出しやすく、目につきにくい場所なのがよいのだそう。

リビングから玄関まで光と風が通り抜ける。家族の気配が感じられるよう、ガラスをあしらったドアを採用した。

リビングから玄関まで光と風が通り抜ける。家族の気配が感じられるよう、ガラスをあしらったドアを採用した。

玄関前のキャビネットには、家族全員の靴と、鍵やティッシュなど外出時に必要なものを収納。靴は5人でこれだけ。

玄関前のキャビネットには、家族全員の靴と、鍵やティッシュなど外出時に必要なものを収納。靴は5人でこれだけ。

本当に必要かを見極める

テーブルクロスをリメイクしたお手製のカーテンで仕切られた洗面は、造り付けの洗面台が活躍。バスケットを活用し、使うものを無駄なく収納している。
「洗面台にはタオルかけ、足拭き用のマットかけを取り付けました。洗面グッズなどは引出しの代わりに、無印良品のバスケットを使っています」。
石鹸、漂白剤、シャンプーなどのストックはひとつのバスケットにまとめて収納。箱ひとつ分と決めることで、買いすぎてストックが増えることを防いでいる。
「洗面に限らず、収納はここだけとスペースを決めることが増えすぎないコツだと思います」。

本当に必要な収納スペースだけ用意しておくこと、買う前にどこにしまうか、しまえるかを考えてみることが、無駄なく快適に暮らすコツのひとつかもしれない。

造作の洗面化粧台。天板は最初は木だったのが傷んできたのでタイルを貼った。

造作の洗面化粧台。天板は最初は木だったのが傷んできたのでタイルを貼った。

タオルは衛生面から共用せず、ひとり1枚。肌にやさしい素材を愛用。

タオルは衛生面から共用せず、ひとり1枚。肌にやさしい素材を愛用。

洗面の収納はIKEAのものを取り付けた。清潔感のあるガラス製の棚板が気に入っている。

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