築50年超リノベーション  歴史を刻みながら進化していく家

築50年超リノベーション歴史を刻みながら
進化していく家

どこにいても家族が繋がっている空間に

今年で結婚5年目を迎える鈴木家は夫婦と4歳になった息子の3人暮らし。3年前に70㎡ある築54年のマンション物件を購入し、フルリノベーションをした。
「子供が産まれ家族が増えたことをきっかけに、もっと広いところへの引っ越しを考えはじめました。保育園を変えたくなかったので同じ区内で探した結果、都心に住むなら中古物件をリノベーションしたほうが割安だという結論になったんです」と話すのはご主人。
「うちは夫婦共働きなので、子供と過ごせる時間がどうしても限られています。だから家にいるときは、どこに居ても家族が繋がっていられる空間にしたくて、子供部屋からキッチン、リビングまでを一続きにしました。目線は交わらなくても『あそこにいるなぁ』と互いの存在を感じられるのは、子供にとっても私たちにとっても安心です」と奥様。
築54年、約70平米の中古マンションをリノベーション。

築54年、約70平米の中古マンションをリノベーション。

横から座りやすいX脚のテーブルは「PACIFIC FURNITURE SERVICE」で購入。

横から座りやすいX脚のテーブルは「PACIFIC FURNITURE SERVICE」で購入。

約6mのベンチは大勢の来客時にも役立つ。下部は収納スペースとして活用。

約6mのベンチは大勢の来客時にも役立つ。下部は収納スペースとして活用。

ハリの高さに合わせて通路を繋ぐ開口部の高さを統一。

ハリの高さに合わせて通路を繋ぐ開口部の高さを統一。

板にライトを埋め込んで、キッチンに明かりをプラス。

板にライトを埋め込んで、キッチンに明かりをプラス。

50年超ならではの味を生かして

この物件が建てられたのは、前の東京オリンピックのとき。選手が滞在する宿舎として建てられたものだ。築50年はリノベ物件のなかでも比較的、築年数が長いほうといえる。
「ここは海外の人が住むことを想定してつくられたので、当時の物件にしては天井が高く、廊下も幅広。同じ年代の物件と比べて、そこまで古く感じないのは、そうした要因が大きいと思います」とご主人。
そんな歴史を刻んできたこの物件の魅力について聞いてみた。
「工事がはじまり天井を抜いてみると、かつて天井板を吊り下げていた金具が見つかりました。ほかにも頭上に上階の水道管が走っていたり、雨戸が金属板を開閉するタイプだったり。古い建物ならではの痕跡がユニークで、多くはそのまま残すことにしたんです」
そしてリノベーションをする際に最も頭を悩ませたのが、キッチンの天井を貫く大きな梁。築年数が35年を超える物件では構造上、こうした問題が計画の制約になることは少なくないという。
「ハリと通路をつなぐ開口部の高さを揃えました。高低差をなくすことで、梁の存在感を抑えるようにしてもらったんです。さらにハリの下にライトを埋め込み、天井の低い部分を明るく照らすことで、ハリの重々しさも軽減しました」
3脚つなげたソファは「D&DEPARTMENT」で購入したしたマルニ60。

3脚つなげたソファは「D&DEPARTMENT」で購入したしたマルニ60。

金属でできた開閉式の雨戸は築50年超の物件ならでは。

金属でできた開閉式の雨戸は築50年超の物件ならでは。

本棚付デスクは「DOOGS DESIGN」でによるデザイン。

本棚付デスクは「DOOGS DESIGN」によるデザイン。

かつて天井板を吊り下げていた金具の名残りもそのままに。

かつて天井板を吊り下げていた金具の名残りもそのままに。

工業的デザインのトグルスイッチは「toolbox」で購入した。

工業的デザインのトグルスイッチは「toolbox」で購入した。

第一印象が大切なのは家も同じ

この物件を語る上で欠かせないのが、玄関からの眺望だ。扉を開けて最初に目に飛び込んでくるのは、廊下の先にある丸い鏡。
「物件の構造上、玄関の前にリビングをつくるのが難しかったんです。そこで長い廊下を設け、目先にはアイキャッチとなる鏡を配置。初めて来た人が『お!』と惹きつけられるように工夫しました」とご主人。
「玄関前の洗面所はすごく便利ですよ。外から帰ってきたときすぐに手を洗えるし、朝出かけるときにはトイレ前の姿見が役立っています」と奥様もお気に入りの様子。
そしてもう一つ、統一感を出すためにインテリアにも工夫を凝らした。
「キッチンの食器棚や靴箱、仕事机、ベンチに至るまで、インテリアには全て合板を使いました。一部だけ使うと目立つので、全体に使うのがポイントです。合板は一枚板に比べてリーズナブルなだけでなく、時間が経っても曲がりにくく、湿気の多い日本の気候にはぴったりだと思います」
そしてリビングの仕事机は、こだわりのオーダーメイド。職人さんが寸法から測り、上部の本棚と合わせて同素材の合板で仕立てた。
「デスクを2つ並べたのは息子用です。子供が大きくなったら、2人並んで勉強や仕事ができたらいいなぁ。お互い違うことをしていても、同じ時間を共有できる、そんな家庭を築きたいです」と締めくくってくれた。
「SANWA COMPANY」のステンレスキッチン。

「SANWA COMPANY」のステンレスキッチン。

玄関を入ると、正面の丸い鏡まで一直線に廊下がのびる。

玄関を入ると、正面の丸い鏡まで一直線に廊下がのびる。

洗面台の横に設けた姿見のおかげで、支度がスムーズに。

洗面台の横に設けた姿見のおかげで、支度がスムーズに。

約8.5㎡の和室は施工前からあった雪見障子を生かすことに。

約8.5㎡の和室は施工前からあった雪見障子を生かすことに。

各部屋の雰囲気よってコンセントプレートの色をチョイス。

各部屋の雰囲気よってコンセントプレートの色をチョイス。

玄関にはロープで吊るすシンプルな照明を。

玄関にはロープで吊るすシンプルな照明を。

子供部屋は将来のことを考えて広めの約6㎡。

子供部屋は将来のことを考えて広めの約6㎡。

リノベーションは「NENGO」に依頼。壁面には同社の「PORTER'S PAINTS」を使用。

リノベーションは「NENGO」に依頼。壁面には同社の「PORTER’S PAINTS」を使用。

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