ルーフバルコニーのある家緑と黄昏時の風景を楽しむ
自由に描くキャンバス
広大な公園の緑を借景に
インテリアデザイナーとして活躍されている太田恵美さん(Instagram:emiota_ufficio)のご自宅は、都心にあって緑深い広大な公園が目の前。ほぼ同じ間取りがないユニークな造りの棟にある1室を、新築で購入した。
「ルーフバルコニー付きのマンションを探していたのですが、通常は上の方の階にあることが多いんです。ここは2階なのですが、目線の高さに目の前の公園の緑が広がっているのがとても素敵で、内見後すぐに購入を決めました」。
10畳のリビングの向こうに、ひと部屋分程のルーフバルコニーが。その向こうに遮るもののない木々が生い茂る。
「本当はリノベーションを考えていて、古いマンションを中心に探していました。でもこんなに条件のいい物件はなかなかないですよね。春は花水木の白い花、秋は紅葉など、四季折々の景観を見せてくれます。ルーフバルコニーはリビングの延長のように考えていて、ランチをしたり、お茶を飲んだり、絵を描いたり、そんな時間を楽しんでいます」。
自分らしいトキメキ感を
太田さんはマンションのモデルルームのプランニングなどの仕事も行っている。
「仕事柄、リノベーションしなくても素敵に住めることを、自分で実験しているところがあります。空間はシンプルにしておいて、家具やデコレーションで素敵に見せて楽しく住まいたい。たまたま間取りが面白かったことと、主張の強い建材が使われていない条件に恵まれていたのですが、ここからスタートしてどこまでできるかを考えるのが楽しいですね」。
広々とした玄関に、収納がたっぷり設けられた廊下を通ってLDKへ。ベッドルームに書斎が備わった80㎡の2LDKを、独創的にアレンジ。
「子どもの頃から、建築家だった父の仕事でイタリアに行っていて、その頃からインテリアに興味を持つようになったんです。しょっちゅう部屋の模様替えをしては楽しんでいます」。
最近はルーフバルコニー側の開口前にダイニングテーブルを置いて、リビングとダイニングスペースを入れ替えた。食事をしながら、公園の景色を楽しんでいるそう。リビング側には大きなソファを大胆に配置。
「大きな家具が好きなんです。床は見えなくてもいいと思うくらい、家具で埋め尽くしたい。ただ、名作家具とか、誰もが知っているもので統一するのはあまり好きではないですね。何系とは決まっていない、定まっていない感じにしておきたいです。どこかで見たインテリアには、トキメキ感が失われる気がします」。
“外す”を意識してコーディネート
ガラスの小物や自ら描いたアクリル画、陶芸作品など様々なものをあしらった空間は、美術館のように美しい。インテリアコーディネートのコツやポイントはどこにあるのか伺ってみた。
「好きなものを集めるとこうなるんです(笑)。ただ、“外す”ことは大事だと思いますね。整いすぎると自分の気持ちがそこで固くなり、終わりが見えてしまいます。進化していく過程を楽しみたいんです」。
例えば、LDKの壁の一面。緑の借景が反射する丸いミラーを中心に、ジャンルや素材にとらわれず小物をたくさんコーディネート。
「ユーモアのあるものが好きなので、ミラーと同時にピカソのドローイングを飾りました。ベースの色は決めていて、ここはモノトーンでまとめているのですが、家中から集めたものをデコレーションしています」。
取り外すことのできないインターホンまわりも、ユーモアたっぷりにアレンジするなど、色々と思いついては更新している。ドアにかかっているエプロンやクロスも、インテリアの一部として、素材を変えて季節感を表現する小物なのだそうだ。
「シンプルな空間を試してみることもあるのですが、そうすると何か落ち着かないんですよね。ある程度、散らかっていて整いすぎていない、そういう状態の方が、気持ちが安らぎます。でも、それでやりすぎると、夫が上手に止めてくれます(笑)」。
色っぽいインテリアを楽しみたい
太田さんが、この家で良かったと何よりも実感するのが、日が沈んでいく頃に現れる部屋の風景。
「段々と黄昏れていく外の景色や、ルーフバルコニーから見る部屋の様子が、ヤバイくらい素敵なんです。インドアグリーンの葉っぱが、照明の具合で陰になったり、ガラスの香水瓶がテーブルライトの光でキラキラしたり。夜になると色っぽくなってきます」。
フロアライト、テーブルライトなど、あちこちに分散させた照明が、幻想的に室内を照らす。
「ペンダントライトは、家具のレイアウトが決まってきてしまうので使っていません。どこにどの照明器具を置くかも、フォーカルポイントなどを考えながら試行錯誤していますね」。
日が沈んでいくにつれて、灯りがもたらす陰影でよりロマンチックな雰囲気に。
「季節によって日差しの加減が変わってくるし、その時々の魅力があります。何年住んでいても、今の瞬間見逃せない、と思うとすごく慌てて帰ってきたりしますね。友人をよく招いて食事をしたりしますが、みんなここ落ち着くねと言ってくれます。本当に家が好きすぎて(笑)。キャンバスのような箱にあれこれ手を加えながら、暮らし続けていきたいです」。