
茶室のある家趣味を楽しみながら
家族の距離が近づく住まい
今もこれからも茶道に向き合う
雄太さん、未来さん、はなちゃん、あさひくん。賑やかな4人家族の森下家の中にあって、凛とした空気感が漂う一角がある。茶室だ。
布張りの襖を閉めると、ほどよい暗さの静謐な空間となる。
「高校に入ってすぐに茶道を始めて19年になります。茶道の先生に“家を作るなら茶室を作ったほうがいい”とアドバイスを受けました。子どもがまだ小さいのでお茶を楽しむ機会が少ないかもしれないと思ったのですが、後から作るのは難しいので一念発起しました。
マンションの限られた空間の中に茶室を作る試みだったので、たくさん勉強して、たくさん悩みました。アドバイスをいただいた茶道の先生には大変お世話になりました」
茶室に詳しい畳職人に出会えたことも幸運だったとか。
リノベーションを手掛けたのは『HandiHouse project』。大工経験のある一級建築士、『紡ぎ舎』の秋山直也さんが腕をふるった。前職の経験を活かして丁寧に茶室を設え、DIYに挑戦する森下家を暖かくサポートしていった。

床柱、網代天井、西ノ内紙、腰張りの見立て、立ち水屋……、襖の素材や色にも気を配って作った茶室。ひょうたんの形の引手をあしらう遊び心も。

茶室の床柱は、『HandiHouse project』の秋山さんと一緒に新木場の銘木屋さんに足を運び、実際に見て選んだもの。

縁側の洗い出しの石の大きさや形は、予め見本を作って検討した。

和室の外には縁側を設えた。布を張った襖を閉めると中がちょうどよく薄暗くなる。

襖を閉めることで茶室が独立した空間になる。一段高い茶室の畳の下は収納になっている。テラスにはデッキを敷くことで、リビングの延長として楽しめる場所に。

キッチンの一部に、茶道の準備のための立ち水屋を作った。「ここには調理道具を置かないルールにしています」

鉄瓶でお湯を沸かす。夫婦ともに背が高いこともあり、キッチンの天板の高さは95cmに。食洗機もつけた。
コンセプトは「趣味と生活の共存」
大きな木々が育つゆったりとした敷地内に1970年に建てられた集合住宅。この建物を見つけたのは雄太さんだ。
「趣味のランニングでこのマンションの近くを通る度に、雰囲気がとてもいいなと感じていました。昔から古い建物が好きだったんです。
ある時、売りに出ている物件があることを知り、見学に来ました。窓からの眺めもよくて、とても気に入りました。ここをリノベーションしたらすごく良さそうだねって妻とも盛り上がりました。
実は同じ建物内に、ここより広い家も売り出されていたのですが、自分たちには70.22㎡のこの広さがいいと感じました。家族の気配がいつも感じられる広さがしっくりきました」
雄太さんの希望は、大きな本棚。リビングの壁いっぱいに本棚を作った。
「妻は茶室。僕は本棚。好きなものに囲まれて、どこかで家族の存在を感じられる住まい。そんな家を目指して家づくりを進めました」

雄太さんの希望は、大きな本棚のある家。リビングの壁一面を本棚にした。窓の外にはマンションの敷地内の緑が広がる。桜や、モミジ、イチョウが、四季折々の姿で楽しませてくれる。「ヒマラヤ杉はクリスマスツリーになるんです」

本棚の前に100インチのスクリーンを降ろし、プロジェクターでダイナミックな映像を楽しむ。

梁を活かして飾り棚を作った。雄太さん、未来さん、それぞれの夢が叶ったリノベーションとなった。
子どもたちが自由に使える空間がある
ロフトやトイレの棚は家族4人で塗装した。
「建築家の方と一緒に作っていくことができればと考えていたので、秋山さんにDIYを教えてもらいながら作っていけたのがとても楽しかったです。子どもたちもペンキを塗って家づくりに参加できたことがとても楽しかったようです」
洗面所のタイルの色と配色、そしてロフトやトイレの棚の色ははなちゃんが選んだ。
「子どもたちが家づくりに参加することができ、私たちも何度となく足を運んで完成までの道のりを一緒に歩むことができたのは、『HandiHouse project』にお願いして良かった大きな理由のひとつになっています」
柔らかなスギ材のフローリングは、どこでゴロゴロしていても気持ちがいい。
「表面にウレタン塗装を薄く仕上げている状態なので被膜が薄いようです。子どもの涙の跡が転々と残っていることに気づきました(笑)」
傷も跡も、暮らしながら増えていくものだ。この家は、これからも森下家とともに育っていく。

子どもたちの個室は上下2段に。写真左側の棚板を使って登る。ピンクのフロアは家族全員でペイント。「個室は子どもたちが自由に使ってよい空間です。壁に絵を描いてもOKです」

はなちゃんとあさひくんの机が並ぶ。本棚の後ろの個室は将来的にカーテンを引けるように下地を入れてある。

DIYをサポートした『HandiHouse project』の秋山直也さん。一緒に家作りを進めていくうちに、すっかりご家族に溶け込んだ。

アーチにかかるカーテンの向こう側はウォークインクローゼットになっている。

壁の曲線を彩る本棚。曲線に沿って進むとロフト空間が現れる。

トイレの窓は三角にする遊び心。

洗面所のタイルの色は、はなちゃんのセレクト。どこにどの色を貼るか、位置もはなちゃんが決めた。








