建築家の自邸の収納に学ぶきめ細やかな収納計画で叶う
豊かな暮らし
収納するモノと場所を整理する
建築家の小田内晃彦建築設計事務所の小田内晃彦さんの自邸には、丁寧に考えられた収納のアイディアに満ちている。
「住宅を設計する際は、事前にお施主様の持ち物を細かくヒヤリングし、収納するものと場所を整理します。そして収納スペースには建具を使い、すっきりと見せたいと考えています」
見せる収納は整理整頓が得意な人には向いているが、苦手な人には重荷になる収納方法だ。
「自邸もどこに何を収納するのかをあらかじめ決めて設計しました」
たとえば、ダイニングとキッチンの間の収納扉は、下15cmほど開けて、ルンバが自動で帰ってこれる基地に。仕事で使う建材のサンプルは、自然光が入る場所の近くで収納している。
【オモチャ】を収納する場所を作っておく
「子どもがまだ小さい頃はおもちゃが散らかってしまうので、小さなお子さんがいるご家族の住宅を設計するときにはおもちゃを片付けられる収納を意識するようにしています。
自邸の設計では、家族が一番居るリビングの近くで子どもがおもちゃで遊ぶ時間が多いと考えたので、リビングとダイニングの間に設けた開口枠の側面におもちゃをしまう場所を計画しました」
毎日使う【洗面室】は重要な場所
「洗面室は家族が毎日何度も使う場所です。そして、顔を洗ったり、歯磨きをしたり、髪を乾かしたり、たくさんの行動をします。毎日使う場所がきれいに片付けられるように、洗面室は設計する上でとても重要な部屋であると思っています。
我が家の洗面室は脱衣室も兼ねているので、洗濯物をたたんだり、体を拭いたりと、さらにアクションが増えるため、収納計画や家事動線には時間をかけて検討を重ねました」
【清掃用品】の収納場所も決めておく
必ず使う掃除用具をどこにしまうか、忘れずに予め計画しておこう。掃除機は思いのほか嵩張るもの。電源も必要だ。スティックタイプの掃除機なら高さのある収納も必要になる。
「我が家はロボット掃除機を使っているので、掃除機のための基地を作りました。建具の下を開けておいて、自動で帰還してもらいます」
グルリと回遊できる【書棚】スペース
収納スペースをしっかりと確保する一方で、場所の使い方をフレキシブルにすれば限られた占有面積の有効活用につながる。
小田内邸は職住一体の家。働く場所と生活する場所を分けてしまわず、共有するスタイルだ。家族が食事をするダイニングテーブルは、クライアントとの打ち合わせスペースになり、木枠の内側の書棚には、建築関係の書籍と、子どもの絵本も並ぶ。
「家の一部に小さなオフィススペースを作るのではなく、すべての場所がオフィスであり、同時にすべてのスペースが家族が暮らす家になるよう考えました。平日の日中、妻と子どもが外出している間、使われていない部屋があるのは効率が悪いですから」
1階は4つの開口枠が様々な役目を果たしており、4つの空間の床材が違う。リビングはモルタル、ソファの部屋はフローリング、キッチンがリノリウム、テラスのウッドデッキ。どんなことをして過ごすスペースなのか、床材が雄弁に語ってくれる。
【収納スペース】はたっぷりと
収納で最も頭を悩ませるのが、日々増えていくモノが、収納場所から溢れ出してしまうこと。
持っているものが入る分の収納を作るだけでは、遅かれ早かれ部屋がごちゃごちゃして見えてしまうことになる。
「現状の持ち物より、収納スペースを多く設定することが大切です。
住宅を設計する際は、可能な限り収納スペースを作ってあげたいと考えています」